新刊案内 202112

『ハチという虫』(たくさんのふしぎ6) 藤丸篤夫/文・写真 福音館書店

 ハチと言うと、アシナガバチやスズメバチがよく目につく。巣を作り、花の

蜜をすって生きているハチが主と思っていた。たまに山に行くと竹筒などに巣

を作っているハチがいる。なかには、幼虫のお腹に産卵する寄生バチがいるこ

とは知っていた。この本には、それらの多様なハチはそれぞれ進化に関わって

生まれてきたことが書かれている。ハバチやキバチがまず地球上に最初に現れ、

その後、寄生バチ、アシナガバチ、スズメバチが現れてハナバチが誕生した。

 本の初めに、まず、じみなハバチが登場する。まるでハエのようだ。木の葉

っぱに産卵している。薄い木の葉にうまく産卵管を突き刺している。「ハチは

もともと、刺す虫ではありませんでした。」とこの本に書かれている。もとも

とハチの産卵管であったものが、ある種は毒ばりを持つようになった。続いて

キバチが登場する。伐採した木の皮に産卵するという。黒い姿だがもう胸がく

びれたハチの姿をしている。針も強そうなスタイルだ。やがて木に潜む幼虫に

卵を産むハチが現れる。生き物に産卵する方が栄養価が高いことを知ったハチ

は、樹上の虫も狙うようになる。それには針を刺しやすくするため体の形まで

変化させる。体がくびれやすくハチ独特の姿に進化したハチ、寄生バチが誕生

する。素早く腹部を曲げ、クモに産卵をしかけるハチの写真が写し出されている。

残酷なのが(人にはそう見える)チョウなどの幼虫体内に、幼虫を生かせたま

ま体内に産卵する行動だ。幼虫の免疫作用をうまく麻痺させ、ハチの卵はチョ

ウの幼虫体内でゆうゆうと育つ。アメンボの卵から生まれてくるハチの姿も写

真で出ている。生き物と言えども、むごいと言えばむごい。これも自然の摂理か。

もちろん、その分農作物を荒らす幼虫駆除に一役買っている面もある。やがて、

自ら巣をつくりその中に青虫をたくわえるハチも現れる。その方が、産卵する

には効率的だ。さらに進化して、自らの巣に細かな袋を作り、その中に卵を産

むアシナガバチやスズメバチなどが出てきた。ハチの世界はさらにハナバチへ

と進化していく。豊富な写真でハチの進化が読み取れる。     

                      20216月 770円 

 

『地球以外に生命を宿す天体はあるのだろうか?

(岩波ジュニスタ) 佐々木貴教 岩波書店 

 岩波書店から出たJunior Start Booksシリーズ。中学生にも気軽に読め

るシリーズである。 

まず、この本『地球以外に生命を宿す天体はあるのだろうか?』を紹介したい。

 最初に天文学の歴史が紹介されている。「地動説」から始まって「天動説」

へ、太陽系の発見から銀河宇宙の発見まで簡潔に書かれている。そこから、

まず「太陽系内に生命を探す」が始まる。まず、「生命を宿す可能性」の一つ

とて考えられるのは〈液体の水があるかどうか〉である。どうやら惑星に液体

の水は見られず、火星・木星の衛星のいくつかに液体の水ないしはメタンがあ

ることが分かった。ガリレオ探査機などが撮影している映像から推測されてい

る。では、太陽系以外に目を向けるとどうだろう。太陽系外の恒星にもいくつ

もの衛星があることは推測され、事実ペガスス座の惑星などが発見されている。

現在では4000もの系外惑星が発見されている。惑星は光を発していないので

普通の光学望遠鏡では見えないはず。それなのに、これらの惑星はどうして探

るのだろうか。そのことがくわしく書かれている。

さて、これらたくさん見つかっている惑星や衛星に生命を宿す星はあるのだ

ろうか。大変興味深い問題だ。太陽系でも、液体の水が存在する可能性のある

ゾーンはだいたい決まっている。あまり、太陽に近づくと蒸発してしまうし、

太陽から離れすぎると凍ってしまう。水が液体でいられるゾーンはハビタブル

ゾーンと言われている。なので、銀河宇宙でもそのあたりの惑星を探せば生命

の可能性はありそうである。今は、地球から離れて宇宙から観測できる望遠鏡

もある。それらの望遠鏡を駆使して、系外惑星が探られている。

今のところ、第二の地球はまだ見つかっていないが、いずれ、見つかるかも

しれないという。もちろん、人のような知的生命体はいるのか、いたとしても

何らかの交信ができるのかは未定です。息の長い話になるが、宇宙に夢をつな

ぐ材料ではないだろうか。文章は読みやすくまとめられている。

                                    20215月  1,450

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